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2024.06.27

RNASeq(RNAシーケンス)とは?解析原理や応用可能な研究分野等の基礎知識

リアルタイムPCRやDNAマイクロアレイ法と並び、遺伝子発現解析に用いられる代表的な手法として「RNASeq(RNAシーケンス、またはRNAシーケンシング)」が挙げられるでしょう。 そこで今回は、機器やアプリケーションのご紹介を通して研究現場のお困りごと解決を支援するミクセルが、空間的遺伝子発現の解析手法の一つとしても注目を集めるRNASeqとは何か、解析原理や他の方法との違い、活用可能な研究分野などの基礎知識について解説していきます。 RNASeqに興味があり、ご自身の研究への採用を検討中という方は、ぜひ参考にご覧ください。

RNASeqとは?解析原理・手順を解説

RNASeq(RNAsequence / RNAsequencing)とは、細胞をはじめとする生物由来組織に存在するRNA分子の配列情報を次世代シーケンサー(NGS)を使って読み取る解析手法の総称です。

厳密には、解析ターゲットとするRNAの種類ごとに異なるアプリケーションとして区別されますが、一般的にRNASeqと言うと、真核生物の成熟mRNA(メッセンジャーRNA、コーディングRNAとも呼ばれる)を濃縮して読み取り、解析する手法を指すことが多いでしょう。

なお、サンプルとして細胞集団または生体組織片を使用するケースが多かったこと、また近年になって登場したscRNASeq(singlecell RNASeq)と区別する目的から、「バルクRNASeq」や「mRNASeq」と呼ばれることもあります。

RNASeqの代表的な用途としては、遺伝子発現解析が挙げられます。遺伝子発現解析とは、ゲノム上に存在する遺伝情報のうち、どの部分がDNAからRNAに転写され、さらにタンパク質に翻訳され遺伝子として発現しているのかについて、網羅的に解析する研究手法のことです。

DNAの遺伝情報をコピーする役割を担っているmRNAから、その塩基配列を網羅的に読み取ることができるRNASeqは、遺伝子発現を定性的かつ定量的に推定するのに役立っています。

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RNASeqによる遺伝子発現解析の方法

ミクセルにおいても、RNASeqを活用したいとお考えの研究者様に対し、さまざまなRNASeqアプリケーションをご提案・ご紹介しております。そこで以下からは、ミクセルにて真核生物のmRNASeqを受託させていただく場合を例に、RNASeqによる遺伝子発現解析の大まかな手順と原理について、チェックしていきましょう。

  1. 生物由来の生体組織サンプルからtotalRNAを抽出、精製する
  2. ポリA構造をキャプチャーしてmRNAだけを単離、濃縮する
  3. mRNAを鋳型に逆転写によってcDNAを合成、増幅させておく
  4. cDNAを断片化した後、シーケンスアダプターを付加してライブラリーを調製
  5. 作製したライブラリーを次世代シーケンサーにセットし、SBSシーケンスでmRNA分子由来cDNA断片を読み取り、データを取得
  6. データをリファレンス配列にマッピングし、発現している遺伝子を特定・定量化する

RNASeqと他の遺伝子発現解析手法の違いとは?

RNASeqと他の遺伝子発現解析手法の違いとは?

RNASeqとは何か、その代表的な用途や大まかな手法について理解できたところで、ここからは同じく遺伝子発現解析に使われる他の手法との違い、特徴について学んでいきましょう。

冒頭でも述べた通り、RNASeqとともに遺伝子発現解析に使われる代表的な手法としては、「リアルタイムPCR」と「DNAマイクロアレイ法」の2種類が挙げられます。

リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析の概要

リアルタイムPCRとは、RT-PCR技術をベースとした解析手法の一種です。事前に特定の遺伝子配列をターゲットに設定し、アンプリコンの増幅速度をリアルタイムで測定することにより、サンプル中の初期鋳型量から遺伝子の発現量を推定していきます。

DNAマイクロアレイ法による遺伝子発現解析の概要

DNAマイクロアレイ法とは、DNAハイブリダイゼーション技術をベースとした解析手法です。

具体的には、まず解析したい既知の遺伝子配列に対して相補的なプローブオリゴを合成し、ガラススライド上に1つずつ固定します。そこに解析したいサンプルを加え、サンプル中のmRNA由来分子とハイブリダイゼーションを起こしたプローブオリゴを解析することにより、遺伝子発現を網羅的に定量していくというものです。

RNASeqならではの特徴

リアルタイムPCRとDNAマイクロアレイ法では、解析前にターゲットとする遺伝子領域を決定したり、特定の遺伝子配列と相補的なプローブオリゴを合成しておく必要があります。そのためこれらの解析手法は、既に塩基配列が明らかになっているサンプルにしか実施できません。

対してRNASeqは、塩基配列が未知の転写産物にも実施可能です。また解析費用が2万円代からとコストが安いこと、そしてダイナミックレンジが広く、さまざまなデータ解析ツールが普及しており主要ツールとして浸透しているところも、RNASeqのメリットだと言えるでしょう。

一方で、ターゲットを設定する必要がなく取得できるデータ量が大きい分、解析開始から納品されるまでに3週間程度の時間がかかってしまうこと、またデータの受領に比較的大きなストレージが必要になる点には、注意が必要です。

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RNASeqが活用できる研究分野・目的の具体例

RNASeqが活用できる研究分野・目的の具体例

主にmRNAに着目した解析に利用されるRNASeqですが、理論上は、lncRNAやmiRNA、rRNA等を含む全転写産物を同時に、網羅的に解析することも可能です。そのためRNASeqは、遺伝子発現解析以外にも以下のような研究分野・研究目的のために使われることもあります。

  • さまざまな条件・処理下での異なる組織やサンプル転写物の定量的プロファイリング
  • 新規転写物や融合遺伝子、1塩基の多型・欠失・挿入など転写物の変異の発見
  • 選択的スプライシングによるバリアントの判別、解析
  • 新規転写産物/アイソフォーム、SNP/InDel同定、融合遺伝子の解析に基づくバイオマーカー探索
  • がんなど細胞変異によって起こる疾患の判別、診断、治療を目的とした生物由来組織の解析
  • 組織特異的な転写物や、時間経過に伴う遺伝子発現を利用した発生メカニズム・薬剤耐性等に関する研究
  • トランスクリプトームと組み合わせたオミックス解析(トランスクリプトミクス)

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ミクセルなら各種サンプルを使ったRNASeqも受託可能

株式会社ミクセルでは、主にmRNASeqを実施したいとお考えの研究者様に対し、RNASeqをご紹介しております。真核生物の非ストランド特異性RNASeq・ストランド特異性RNASeqはもちろん、微量のRNAや原核生物へのmRNASeqなど、各種RNASeqのお取り扱いがございます。

またお客様には、原則totalRNAでのサンプル提出をお願いしておりますが、サンプルの状態によっては組織や血漿、血清等よりRNAを抽出するところからご依頼いただくことも可能です。

原核生物の転写産物やncRNA、完全長アイソフォーム(ロングリード)、全トランスクリプトーム、メタトランスクリプトームに関するデータを提供させていただくこともできます。

サンプル調製に役立つ!オリジナル製品も取り扱い中

ミクセルでは、サンプル調製にご利用いただけるチップやチューブ等の機器についても、オリジナルの製品を開発・販売しております。以下は、製品の型番、名称、包装単位の一例です。

型番 製品名 包装単位
MIX-SD PCR0.2ml シングルチューブ(ドーム) 1,000本入
MIX-SF PCR0.2ml シングルチューブ(フラット) 1,000本入
MIX-8DC PCR0.2ml 8連チューブ+キャップドーム 120strips
MIX-8FC PCR0.2ml 8連チューブ+キャップフラット 120strips
MIX-Y104B 10μLチップ(バルク) 1,000本入
MIX-Y110B 200μLチップ(バルク) 1,000本入
MIX-Y111B 1,000μLチップ(バルク) 1,000本入

※他の製品について、また各製品の価格については、別途お問合せください。

チューブは、貴重なサンプルの蒸発を抑制するとともに、高い密閉性で調製時の増幅反応効率を向上させるお手伝いをいたします。

また、作業の正確性を高めることにこだわって製作したチップは、高い柔軟性と内側のシーリングがポイント。しっかりフィットすると同時に、少ない力で取り外しが可能なつくりです。
高い精度で試料の分注を行えるようにすることで、サンプルの回収率向上に貢献いたします。

サンプルの調製や適切な解析手法、データの受領・活用のポイントまで、RNASeqについてわからないこと、心配なことがあれば、ぜひ一度ミクセルの「受託の窓口」にお問合せください。

お客様の研究目的やご希望に合わせて、RNASeqによる解析を幅広くサポートいたします。

研究現場のお困りごとは「受託の窓口」へご相談ください

研究現場のお困りごとは「受託の窓口」へご相談ください

株式会社ミクセルは、”日本の文化と技術で長寿を喜び合える社会をつくる”ことを理念として、研究者の夢を未来へ届けるための研究支援事業やヘルスケア事業、日本の医療・介護インフラと世界をつなぐための事業を行っております。

そんな私たちが、研究支援事業として運営する「受託の窓口」では、以下のような研究現場のお困りごとを解決すべく、経験豊富なスタッフ陣が最適な受託サービスをご提案いたします。

  • 研究する上で必要なデータを解析・取得したいが、どうすれば良いかわからない
  • どこに、どんな風に頼めば欲しいデータを得られるのか、必要な予算もわからない
  • 解析を依頼したいサンプル数が少なく、他のプロバイダーに受け付けてもらえない
  • 結果をきちんと解読できるか心配なので、解析後のアフターフォローまでしてほしい

お問合せ、お打ち合わせにはオンラインで対応しておりますので、日本全国どこの研究室からのご依頼にも対応可能です。データの取得や解析、活用方法等についてお困りのことがございましたら、依頼したいアプリケーションをご検討の上、ぜひ「受託の窓口」までお気軽にご相談ください。

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