2024.08.26
NGSによる次世代シーケンスとは?基本的な解析原理や特徴について
次世代シーケンスは、遺伝子変異が原因で起こるがんなど遺伝性疾患の判別、診断、治療法の研究や、主に遺伝子発現解析に使われるRNASeq等の基盤技術にもなっている解析手法です。 そこで今回は、機器やアプリケーションを通して研究現場のお困りごと解決を支援するミクセルが、NGSを用いた次世代シーケンスの基本的な解析原理や、従来式のシーケンス法と比較した場合の特徴についてわかりやすく解説していきます。 併せて、次世代シーケンスが役立つ研究内容の具体例も紹介していますので、解析手法の選択にお悩みの研究者様は、ぜひ参考にご覧ください。
NGSを使った次世代シーケンスとは?概要と基本原理
次世代シーケンス、または次世代シーケンシングとは、次世代シーケンサ(NGS/Next Generation Sequencing)を使って生物由来サンプルに含まれるDNA、RNA等の断片(リード)を高速で効率よく、かつ複数同時に解読して、遺伝子の塩基配列を決定するための技術です。
2000年代に登場した比較的新しい技術であること、そして、次世代シーケンスが登場するまで遺伝子配列の解読・決定方法の主流であったサンガーシーケンス法との比較から、この名前で呼ばれています。
次世代シーケンスの基本原理
次世代シーケンスの基本的な手順は、DNA断片をライブラリ調製してアダプターを付加した後、増幅させ、次世代シーケンサにかけてシーケンスするというものです。ただ、次世代シーケンスにおける解析の原理は、次世代シーケンサやアプリケーションを提供する企業により、少しずつ異なります。
そこで以下からは、次世代シーケンスの代表的な解析原理を採用しており、ミクセルからもご提案・ご紹介が可能なillumina(イルミナ)社製、MGI社製をはじめとする多くのNGS装置を使用する場合を例に、次世代シーケンスの大まかな原理・手順を確認していきましょう。
- サンプルDNAを次世代シーケンサで読み取れる長さで断片化し、アダプターを付加してライブラリ調製する
- フローセル上において、フローセル内部のオリゴヌクレオチドとDNAライブラリを結合させた後、ブリッジPCRを用いて増幅し、クラスターを形成する
- クラスターの1反応に対し、それぞれ別の色で蛍光標識した4ヌクレオチド(A、T、C、G)を加え、取り込まれた塩基の蛍光をカメラで読み取り、塩基配列を特定する
- 取り込まれなかったヌクレオチドが洗い流され、DNA鎖の伸長を阻害していたブロック基と蛍光色素を取り除いた後、再び4ヌクレオチドを加える
- 3~4のサイクルを繰り返すことにより、遺伝子配列を(1塩基ごとに)解読していく
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次世代シーケンスと従来型手法の原理の違い
次世代シーケンスの基本的な原理・手順について大まかに理解できたところで、ここからは、従来型の手法とされるサンガーシーケンスの手順と原理、特徴について見ていきましょう。
電気泳動によるサンガーシーケンスの原理・概要
「サンガー法」や「キャピラリー電気泳動法」とも呼ばれるサンガーシーケンス法における塩基配列の解読・決定の大まかな手順と原理は、以下の通りです。
- まず、解析したいDNAの塩基配列の鋳型鎖をPCRで増幅させておく
- 増幅したDNA断片にプライマー、DNAポリメラーゼ、別々の蛍光色素を付けた4塩基分のヌクレオチド、そしてDNA鎖の伸長を阻害するジオヌクレオチドを加える
- 1~2の工程で調整した反応混合液をキャピラリーに電気泳動させ、DNA断片の発光色を読み取ることによって塩基配列を解読・決定する
次世代シーケンスとサンガーシーケンスの違い
キャピラリーを用いて行うサンガーシーケンスでは、キャピラリーごとに1つのDNA断片のみをシーケンスするため、1回のランで同時にシーケンスできるリード数は非常に限定的でした。
対して次世代シーケンスでは、同時並列的に数百〜数千ものリードをシーケンスすることができるため、1回のランで数億〜数十億ものDNAやRNAの断片をシーケンスすることも可能です。
このように、大量の遺伝子配列を同時に効率よく解読できるところは、次世代シーケンスならではの強みだと言えます。大量のサンプルを短時間で効率よく解読したいとお考えの研究者様にとっては、次世代シーケンスは非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
ただ、数十ほどの少ないサンプルやターゲット遺伝子を解読したい場合には、精度や費用対効果の面でサンガー法が適しているケースもあります。ご自身のテーマや解読したいリード数、研究にかけられる期間や予算等も加味しつつ、採用する解析手法を選ぶようにしてください。
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次世代シーケンスが活用できる研究分野・目的の具体例
従来のシーケンス方法に比べて効率が良い分、大量のサンプル解析でも低コストで進められる次世代シーケンスは、大規模なゲノム解析やトランスクリプトームなど幅広い研究分野や目的で利用されています。
そこで以下からは、次世代シーケンスを大きく「ショートリードシーケンス」と「ロングリードシーケンス」の2種類に分けて、各手法の原理や特徴、また活用に適した研究分野の具体例について見ていきましょう。
ショートリードシーケンスが活用できる研究分野は?
ショートリードシーケンスとは、50〜300塩基(bp)ほどの比較的短いDNA断片を同時に解読する次世代シーケンスの解析手法のことです。
読み取り深度が高く、高解像度でゲノム領域をカバーできるところ、また後述するロングリード解析に比べ、低コストで次世代シーケンスを行えるところがメリットだと言えるでしょう。
なおショートリードシーケンスの活用に適した研究分野やシーンの具体例としては、以下が挙げられます。
- ゲノムワイドのシーケンス解析
- SNP(単一塩基多型)解析
- RNASeqによる遺伝子発現解析や転写産物の同定 など
【関連記事】RNASeq(RNAシーケンス)とは?解析原理や応用可能な研究分野等の基礎知識
ただ一方で、ショートリードシーケンスでは長く連続した塩基配列を読み取ることは難しいため、ゲノムアセンブリやリピート領域の解析には向いていません。そのような解析に次世代シーケンスを活用したい場合は、ロングリードシーケンスを採用するのがおすすめです。
ロングリードシーケンスが活用できる研究分野は?
ロングリードシーケンスとは、数千~数十万塩基(bp)の長いDNA断片を同時に解読することができる次世代シーケンスの手法です。ショートリードシーケンスとは異なり、長く連続した配列を読み取ることを得意とするため、以下のような研究分野での活用に適しています。
- ゲノムアセンブリ
- ゲノムの構造変異の検出
- リピート領域の解析 など
なおロングリードシーケンスは、原理上、ショートリードシーケンスに比べてエラー率が高くなることが分かっています。しかし、近年ロングリードシーケンサーの開発が進んだため、ショートリードシーケンスとロングリードシーケンスのエラー率の差は縮まりつつあります。
今後は、ロングリードシーケンスとショートリードシーケンスを組み合わせて解析を進めることにより、次世代シーケンスの解析精度をさらに高めていくということも、可能になってくるでしょう。
ただ先述した通り、ロングリードシーケンスはショートリードシーケンスよりも実施コストが高い場合が多いため、その点には注意が必要です。
【関連記事】プロテオーム解析・プロテオミクスとは?意味や手法について解説
ミクセルなら各種NGSによる次世代シーケンスがご紹介可能
株式会社ミクセルでは、NGSを使った次世代シーケンスを実施したいとお考えの研究者様に対し、次世代シーケンスに対応するプロバイダや関連アプリケーションをご紹介しております。
次世代シーケンスを実施する際には、その時その時の実験内容や研究目的に適したNGS機材やアプリケーションを選択しなければなりません。しかし、illumina社のNovaSeq Xやスクラム社のAVITI等、NGSだけでもさまざまな種類がある中で、ご自身の研究にとって最適な機材や次世代シーケンスの手法を選択するのは、非常に困難だと言えるでしょう。
複数の受託プロバイダーとお取り引きのあるミクセルでは、お客様の研究目的やご予算、サンプルの分析にかけられる期間等の希望条件をお伺いした上で、複数のNGS機材やシーケンス手法、プロバイダーの中から最適の選択肢をご提案させていただきます。
研究室へのNGS導入を検討しているものの、購入費用やランニングコストに不安があるという方や、次世代シーケンスを外部委託で実施したいとお考えの場合は、ぜひ一度、ミクセルの「受託の窓口」にお問合せください。
サンプル調製に役立つ!オリジナル製品も取り扱い中
ミクセルでは、サンプル調製にご利用いただけるチップやチューブ等の機器についても、オリジナルの製品を開発・販売しております。以下は、製品の型番、名称、包装単位の一例です。
型番 | 製品名 | 包装単位 |
---|---|---|
MIX-SD | PCR0.2ml シングルチューブ(ドーム) | 1,000本入 |
MIX-SF | PCR0.2ml シングルチューブ(フラット) | 1,000本入 |
MIX-8DC | PCR0.2ml 8連チューブ+キャップドーム | 120strips |
MIX-8FC | PCR0.2ml 8連チューブ+キャップフラット | 120strips |
MIX-Y104B | 10μLチップ(バルク) | 1,000本入 |
MIX-Y110B | 200μLチップ(バルク) | 1,000本入 |
MIX-Y111B | 1,000μLチップ(バルク) | 1,000本入 |
※他の製品について、また各製品の価格については、別途お問合せください。
チューブは、貴重なサンプルの蒸発を抑制するとともに、高い密閉性で調製時の増幅反応効率を向上させるお手伝いをいたします。
また、作業の正確性を高めることにこだわって製作したチップは、高い柔軟性と内側のシーリングがポイント。しっかりフィットすると同時に、少ない力で取り外しが可能なつくりです。
高い精度で試料の分注を行えるようにすることで、サンプルの回収率向上に貢献いたします。
※記事内に登場する会社名や機材名、アプリケーションの名称等は、それぞれ各社の商標または登録商標です。
研究現場のお困りごとは「受託の窓口」へご相談ください
株式会社ミクセルは、”日本の文化と技術で長寿を喜び合える社会をつくる”ことを理念として、研究者の夢を未来へ届けるための研究支援事業やヘルスケア事業、日本の医療・介護インフラと世界をつなぐための事業を行っております。
そんな私たちが、研究支援事業として運営する「受託の窓口」では、以下のような研究現場のお困りごとを解決すべく、経験豊富なスタッフ陣が最適な受託サービスをご提案いたします。
- 研究する上で必要なデータを解析・取得したいが、どうすれば良いかわからない
- どこに、どんな風に頼めば欲しいデータを得られるのか、必要な予算もわからない
- 解析を依頼したいサンプル数が少なく、他のプロバイダーに受け付けてもらえない
- 結果をきちんと解読できるか心配なので、解析後のアフターフォローまでしてほしい
お問合せ、お打ち合わせにはオンラインで対応しておりますので、日本全国どこの研究室からのご依頼にも対応可能です。データの取得や解析、活用方法等についてお困りのことがございましたら、依頼したいアプリケーションをご検討の上、ぜひ「受託の窓口」までお気軽にご相談ください。